先週、やまもとさんが設計・施工した亀有(東京都葛飾区)マンションリフォーム現場がもうすぐお引渡しということで、写真撮影の合間に見学にうかがってきました。
築年数があまり経っていないきれいなマンションで、まだまだ新しくてきれいなところも多いため、今回は全面的な改修ではなく、リビング廻りや浴室などの部分的な改修工事です。
面積は90平米超と広い部屋ですが、もともとはリビング・キッチンのエリアと和室エリアが収納を挟んで分かれていて、全体のつながりがあまりない間取りだったそうです。一般的なマンションは、そういった部屋ごとに区切られた間取りが多いですね。
キッチンとリビングの間も小さな開口部だけだったそうですが、開口部を大きくしてつなげることで、開放感のある明るいキッチンになっていました。キッチン前のウォールナットのムク板カウンターやその脇の収納棚、その下のガラスタイルなどは今回の改修工事で新しくしたもの。キッチンセットや内装は既存のものを残していかしながらも、ムクの木のよさやデザイン性の高い素材をうまく組み合わせることで、とても気持ちのいい空間ができあがっていました。
今回のこの部屋にお住まいになる方はまだお子さんが小さいこともあり、キッチンやリビングと和室がゆるやかにつながるといいなということで、和室の押入れや居間の収納をなくして秘密基地のようなこもりスペースをつくったそうです。ここがとってもおもしろい空間で、居心地がいいのです。
このスペースでブランケットにくるまって読書中のやまもとさん。
大人が寝っころがっても十分な広さですね。
戸建ての住宅の場合でも、広いリビングや子供室よりもなぜかロフトの狭い空間が人気の場所になることがよくよくあるのですが、このスペースもそれと同じようなこもって過ごすちょうどいいサイズのとても落ちつく場所でした。
天袋の下にはカーテンレールをつけることができるようにもしてあって、ちょっとした小部屋のようにして使うこともできそうです。
こもりスペースの視線の先にはキッチンが。
間は棚になっていてしっかり本を収納すれば見えなくすることもできるので、お子さんの成長にあわせてかえていくのもよさそうです。床は厚いムクの杉板が張ってはり、ゴロっとするのにぴったり。
ダイニングテーブルに向いながら和室・こもりスペース側を見たところ。お互いがチラっとみえるくらいのゆるいつながり方が、ちょうどいい距離感です。
ワタシクラシではすべてを解体してから改修する「マンションリノベーション」をおこなっていますが、築年数が浅いマンションでも部分的に改修することで、こんなに大きくかえることができるということを見せていただきました。残す部分とかえる部分がバランスよく成り立っていて、部分リフォームでもできることの可能性をいろいろ考えるいいきっかけにもなりました。
空間全体もとてもよかったですが、お施主さんが選ばれたという金物や照明器具も素敵でしたし、やまもとさんの細かい部分のつくり方、選ぶものもとっても考え抜かれていました。
例えば扉の鍵、ペーパーホルダー、鏡、引手、スイッチプレート・・・。
そういったひとつひとつのものは、小さなもののようであっても、実は毎日目にするもの、手が触れるものなので、住まい心地を左右するとても大きなものなのだと思います。
建築で製作するものについても、ちょっとした寸法や形状、素材の選び方、仕上げ方などのたくさんの小さなことの積み重ねで、大きな全体が出来上がっていき心地よさをつくるのだということをこれからも大切にして家づくりをしていきたいなと、そんなことを考えた1日でした。
(橋垣史子/いろは設計室)